日本から世界まで。さまざまなUD活動を紹介 ユニバーサルデザインの今

ユニバーサルデザインの取り組み事例を3つに分類してご紹介。
街づくり、モノづくり、ヒトづくり。いずれも連関していますが、興味のある分野から、ぜひご覧ください。

テーブルウエア・デザイン
計算されたシンプルなフォルムが美しい
汚れが落ちやすく持ちやすい「美濃リ食器」

美濃焼産地の企業や研究機関をメンバーとして1997年に創設された「グリーンライフ21・プロジェクト(GL21)」では、生活や生産の現場で廃棄される食器を再資源化して、テーブルウエア「美濃リ食器」を製造してきました。GL21では、このプロジェクトをさらに押し進めるために今、ユニバーサルデザインにも力を注いでいます。
テーブルウエア「Re-食器」
美濃焼産地の企業や研究機関をメンバーとして1997年に創設された「グリーンライフ21・プロジェクト(GL21)」では、生活や生産の現場で廃棄される食器を再資源化して、テーブルウエア「Re-食器」を製造してきた。このプロジェクトをさらに推し進めるために今、「GL21」ではユニバーサルデザインにも力を注いでいる

写真:リサイクル土を原料としたRe-食器「美濃創食」(素焼きと完成品)。2001年度グッドデザイン賞/エコロジーデザイン賞を受賞したRe-食器は、ユニバーサルデザインにも目を向けさらなる進化のプロセスを歩んでいる

リサイクル土を原料としたRe-食器「美濃創食」

バージン材とリサイクル材の割合は8対2

 岐阜県東濃地域は美濃焼の産地だ。多治見市、土岐市、瑞浪市には美濃焼の原料や食器製造、流通に関わる多数の企業が存在する。それらの企業有志と岐阜県セラミック技術研究所などの研究機関、9社、9人が集い1997年に結成されたのが、「グリーンライフ21プロジェクト(GL21)」だ。「GL21」では長年にわたり、土の有効活用や環境にやさしい食器づくりに取り組んでおり、現在、参加団体は40団体を越えている。
 「Re-食器」とは、「GL21」が注力するリサイクル土を原料とした食器の総称だ。生産、流通、販売、廃棄という従来のプロセスの後に、回収、再資源化のプロセスを加えた初めての食器である。「Re」は、reproduction(再びつくる)の接頭詞。
 リサイクル材のほうが、環境負荷が大きい場合もあるので、バージン材とリサイクル材の割合を二酸化炭素の排出量や製造効率から判断して8対2とした。

「GL21」の回収場所は全国に広がっている

 「GL21」は特に回収という点で、ユーザーの協力がなければ成り立たないプロジェクトだ。これまでゴミとして捨てられた、いらなくなった食器を蘇らせるためには、何よりもユーザーの理解がいる。
 「GL21」では2001年、不要食器の回収システムの確立に向けて、デパートや自治体など全国十数カ所に拠点を設け、回収実験を行った。
 回収場所は当初、東濃地域だけだったが、「GL21」の取り組みに共感するショップや商店街が全国的に広がり、今では全国22カ所に増えている。回収のスタイルには常時回収と期間限定があり、イベントを通じて行うこともある。「GL21」ではギフト食器からエコ市場に狙いを転換し、環境意識の高い企業、消費者へのアピールを強化している。商店街づくりや企業戦略の観点からも、「Re-食器」への注目度は高い。
 「GL21」では、家庭用食器に加えて、業務用食器についても、循環システムを設けている。

ありふれたフォルムに「美」を与えるのはデザイナーの力量

 美濃焼は和食器の生産量シェアの5割以上を占めるが、高価な食器としてブランド化している焼物とは異なり、日常的に使う食器などが大半だ。しかし、近年では安い中国産の食器に押されて、商品のブランドイメージアップに迫られている。
 ドイツで環境雑誌が爆発的に売れているように、いわゆる先進国ではグリーン購入運動が盛んだ。「Re-食器」が女性誌やファッション誌で取り上げられ、美濃焼のブランドイメージのアップにつながったのは、このような社会的なムーブメントにも起因している。
 しかしエコスタイルをもった食器のデザインは、フォルムが限定されるだけに、デザイナーの力量が試されるという。
 「製造の段階では造りやすく、不良品が発生しにくいこと。使う段階では持ちやすく、水洗いがしやすく、汚れが落としやすいこと。そして乾燥や洗浄を考えると、プレーンな形しかない。ごく当たり前のフォルムで、なおかつ美しくなければなりません」と、岐阜県セラミック技術研究所の長谷川氏はいう。
 「土色彩生」と名付けられた最初のシリーズは、2001年度グッドデザイン賞/エコロジーデザイン賞を受賞した。同シリーズは使いやすさや耐久性を追求したシンプルなデザイン。有害な釉薬をいっさい使わず、「鉄」をベースとした白と黒の2色。「GL21」では、再生の際の二酸化炭素排出量は従来の食器製造を上回らないなどの独自規準を設定している。グッドデザイン賞の審査では、生産から流通、販売、回収、再生までの循環型ネットワークの構築も高く評価された。

リサイクル土に魅せられたフィンランド人デザイナー

 最近では、「GL21」の取り組みに共鳴する海外のデザイナーも増えている。市原製陶株式会社(瑞浪市)が製造するボウルやマグカップをデザインしたフィンランド人デザイナー、カミーラ・グロス氏もその1人だ。
 彼女は「GL21のコンセプトにもとづき、製造過程におけるエネルギー消費をできるだけ抑えるとともに、使いやすく、多機能で、消費者を魅了する製品をめざした」という。このシリーズは製造過程での環境負荷を考えて、例えば窯で焼成するときの無駄なスペースを減らすために、窯のいちばん外側まで窯づめができるように計算されている。プレートにはノブ(突起)が付いており、これでボウルやマグカップを固定することができる。キッチンからリビングルームへ移動する際、こぼれにくいので便利だ。

カミーラ・グロス(Camilla Groth)
1999年ヘルシンキ芸術デザイン大学(UIAH)セラミック・ガラス学科卒業。2001年、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号取得。現在、フリーランスデザイナーとして、ヨーロッパ、日本を主な活動舞台として活躍。「ウエッジウッド・トラベル・アワード」等、受賞多数。イタリアやスイスの企業からも陶磁器、ガラス製品が商品化されている

地場産業の活性化の面でも「GL21」の貢献度は高い
「GL21」は美濃焼の産地である岐阜県東濃地区(多治見市、土岐市、瑞浪市など)の原料や食器製造、流通に関わる企業と試験研究機関とのコラボレーションにより、1997年に結成された。参加企業のほとんどは従業員数200人以下ということもあり、地場産業の活性化の面でも「GL21」の貢献度は高い
回収した器を粉砕し、土に再生した原料
回収した器を粉砕し、土に再生した原料。配合率はバージン素材60〜70%、再生原料20〜30%の割合。再生原料の比率をさらに上げると成形性が落ち、現状の美濃焼産地がもつ生産ラインでは不良品の発生率が増加するので、環境負荷をトータルに考慮してあえてこの割合で配合されている
リサイクル材を使ったものとバージン材のものを色分け
Re-食器を製造する企業のほとんどは、バージン素材を原料とする食器も同時に製造する。企業によっては素焼きの段階で、リサイクル材を使ったものとバージン材のものを色分け
ベルトコンベアーで次の工程へ
窯で焼き上げられた食器はベルトコンベアーで次の工程に向かう。この後、彩色されるが、過度の彩色や有害な重金属を用いた着色はしないのがRe-食器の特徴だ
市原製陶株式会社の工場内部
「GL21」のメンバー企業、市原製陶株式会社(金津洋一社長)の工場内部
カミーラ・グロス氏
フィンランド人デザイナー、カミーラ・グロス氏
カミーラ氏デザインのテーブルウエア
フィンランド人デザイナー、カミーラ・ブロス氏がデザインしたRe-食器のテーブルウエア
マグカップやボウルを固定することができるプレート
プレートには突起が付けられており、マグカップやボウルを固定することができる。キッチンからリビングルームなどへの移動に便利だ。スタッキング機能により、商品の輸送時やユーザーの食器棚の省スペース化が図られている。原料はGL21で開発されたリサイクル土

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