日本から世界まで。さまざまなUD活動を紹介 ユニバーサルデザインの今

ユニバーサルデザインの取り組み事例を3つに分類してご紹介。
街づくり、モノづくり、ヒトづくり。いずれも連関していますが、興味のある分野から、ぜひご覧ください。

神奈川工科大学 ロボット・メカトロニクス学科の山本圭治郎教授

視覚と触覚で楽しむUD絵本

点字や特殊な立体印刷を取り入れ、視覚障害のある子どもたちも楽しめるようになっている「UD絵本」。この絵本のおもしろさは、手に取り、触れて「見る」ことではじめてわかる。

(ユニバーサルデザイン編集部)

【写真左:ともだち】
ヴィヴィットな色使いが目を引きつけ、弱視の人にも色が識別しやすいようになっている。0歳から楽しめるので、赤ちゃんのファーストブックとしても喜ばれる一冊

 

触れて「見る」絵本

ひと言で「ユニバーサルデザイン(UD)絵本」といっても、一体、どんな所がほかの絵本と違うのか、ピンと来ない人も多いのではないだろうか。書店に並べられていても、かわいらしい絵本として通り過ぎてしまうかもしれない。このUD絵本は、手に取って初めてその違いに気づく。

UD絵本を制作・販売する特定非営利活動法人ユニバーサルデザイン絵本センター代表理事の安部昇さんは、視覚障害のある子どもたちが楽しめる絵本が少ないという思いから2002年に立ち上げられた。

UD絵本の特徴として挙げられるのは、点字が併記されているのはもちろんのこと、「凸(とつ)図」と呼ばれる、触ってわかる図や絵などの特殊な立体印刷を取り入れていることだ。さらに製本にもほかとは違った工夫がみられる。一枚の紙を蛇腹に折りたたんだ絵本には、一切の金具が使われていないため子どもたちの手を傷つける心配がない。広げたり積み上げたり、凸図のザラザラ感に触れたり、従来の絵本にはない要素が盛り込まれている。

「絵本の世界からツール、トイ(おもちゃ)という方向性ももち、子どもたちはいろいろな遊び方をはじめていますね」と安部さん。 手作業で一冊ずつ折られているだけに、コストの面が気になるが、授産施設に製本協力を依頼するなどの方法で、「千円以下」の手ごろな値段設定なのも魅力だ。近年では大手出版社へUD絵本の製本や印刷技術のノウハウを提供。図書館にも普及しはじめた。

UDの視点でつくられた絵本は、幼児や発達障害の子どもたちにも喜ばれ、まさに誰もが楽しめる絵本として歩き出した。今後の広がりにますます目が離せない。

特定非営利活動法人
ユニバーサルデザイン絵本センター
http://www.ud-ehon.net/

パワーアシストスーツ
ともだち
装着すれば女性でも男性をラクラク持ち上げられる
なないろのクラ
2007年度 IBBY(国際児童図書評議会)障害児図書選出作品。「クラゲの配色を凸図で表現するのが大変でした」と絵本作家の小林さん。“赤(ボツボツ)青(ストライプ)”など色の表現1つひとつに感心する。
パワーアシスト用エアバッグ
A story of an Elephant’s Nose
すでに発売中である『ゾウさんのハナのおはなし』の英語版。さまざまな国の言語が違うように点字の世界も言語によって違う。中学校の総合学習で生徒たちと一緒に制作されたこの絵本は残念ながら購入できないが、UD絵本センターでは将来的には外国語版も出版していきたいと意欲的だ。(非売品)
「テクノトランスファーin かわさき 2007」でのデモンストレーション。軽々と持ち上げられた人たちから歓声があがった
ダチョウの新記録
詩は藤圭子のヒット曲「新宿の女」の作詞家でも知られている石坂まさをさん。石坂さんのご好意で「ちいさな魔法の動物詩集」より抜粋されたものである。絵は当時、高校生だった鴨美雪さんが描いたもの。つくり手もプロの作家だけではなく、さまざまな人が参加しているのがUD絵本の特徴だ。
ニューヨーク近代美術館(MOMA)の企画展Design and the Elastic Mindでもパワーアシストスーツが紹介された。欧米各国で注目を浴びている
たんぽぽ ぽぽたん
今では道端で、めっきり見かけなくなったタンポポ。絵本や図鑑で初めて知る子どもたちも少なくないだろう。綿毛のフワフワ感を出すために、特殊な布を貼ってあるので触感も楽しめる。

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