日本から世界まで。さまざまなUD活動を紹介 ユニバーサルデザインの今

ユニバーサルデザインの取り組み事例を3つに分類してご紹介。
街づくり、モノづくり、ヒトづくり。いずれも連関していますが、興味のある分野から、ぜひご覧ください。

オフィスのユニバーサルデザイン
─ 多様なワーカーをサポートし、企業価値を向上させる ─

ユニバーサルデザインは高齢者や障がいのある人のためのものだから、オフィスには必要ないと考える企業もまだまだ多い。でも、本当にそうだろうか。高度経済成長期に大多数を占めていた若くて健康な男性、いわゆるミスターアベレージは、いまやオフィスの中で半数以下にすぎない。15〜64歳のいわゆる労働力人口といわれる層は8291万4千人で、前年度に比べて70万3千人の減少。 65歳以上人口は2757万6千人で前年度に比べ81万9千人増加している(平成19年112月1日現在確定値・総務省 統計局)。
このように日本では、かつて経験したことのない少子高齢化が進んでおり、経済を支える労働力人口は今後も減り続けていくと予想されている。
(仲田裕紀子/ユニバーサルデザイン編集部)

写真左:アダプティブ・エンバイロメンツのオフィス

WAKU-BLOCKでジャングルタワーをつくる子どもたち

多様性を経営に生かすダイバーシティやワークライフバランス

減少する労働力をカバーするために高齢者の定年延長や再雇用、外国人の受け入れ、女性のよりいっそうの活用、障がいのある人の雇用などが進められている。実際にオフィスの中を見回すとミスターアベレージに変わり、女性や年配の男性、外国人、障がいのある人や病弱な人など、多様なワーカーで構成されていることがわかる。そんな中でワーカーの多様性を尊重し、経営に生かすダイバーシティは重要な経営課題のひとつだ。またコンプライアンス経営が求められる中で、企業は、障がい者の法定雇用率を達成することや男女共同参画のための女性管理職の登用を積極的に進めていく必要がある。

さらに世界的な潮流として、仕事と個人の生活を充実させるための「ワークライフバランス」が政策として打ち出され、企業もこれに対応している。企業にとってダイバーシティやワークライフバランスの導入は、優秀なワーカーを確保し、できるだけ長く働いてもらうための方策でもある。

一方でICT(情報コミュニケーション)の活用や雇用形態の多様化で個人の働き方も大きく変わってきた。これまでのオフィスは情報を効率的に処理するミスターアベレージのためにつくられてきた。しかし、短期的な効率性だけではなく、事業継続や企業価値向上を実現するためのオフィスが求められている。

ユニバーサルデザインを実現するためのツールや手法

企業の経営方針や戦略によってオフィスの形態はさまざまだ。これがオフィスのユニバーサルデザインだという完成形はない。しかし、多様なワーカーを支え、個人や組織の力を最大限に発揮できるオフィスを実現するための計画・設計 / デザイン・運用には、ユニバーサルデザインが有効だといえる。推進するためには共通のガイドラインや評価システムも必要になる。日本ファシリティマネジメント推進協会(JFMA)の調査研究部会のひとつ「ユニバーサルデザイン研究部会」(以下JFMAUD研究部会)では、オフィスのUDに関する調査研究を行っている。

JFMAUD研究部会による秋季週末セミナー

JFMAUD研究部会では、9月〜12月の土曜日に「オフィスにユニバーサルデザイン」に関する4回の公開セミナーを行っている。9月は企業経営とオフィスのユニバーサルデザイン」をテーマに多様なワーカーをサポートする場としてのオフィスの役割、不動産投資の評価とユニバーサルデザインの可能性などが議論された。10月は、日本を代表するオフィス家具メーカー各社によるユニバーサルデザインの取り組みが紹介され、好評を博した。
11月と12月にも引き続きセミナーが開催される。この分野のキーパーソンによる講演とパネルディスカッションは、オフィスのユニバーサルデザインを知るまたとない機会になるだろう。

事前申込は不要、先着順。聴講料は各回2000円。
問い合わせは、(社)日本ファシリティマネジメント推進協会へ。
http://www.jfma.or.jp
03-3523-2031(平日のみ)。

第3回セミナー 「ユニバーサルデザインの計画手法」

(先着100名)(コーディネータ 池田彩子)
11月15日(土)13:00-18:00 (株)内田洋行新川ビル CANVAS

・第1講
ユニバーサルデザインと要求条件設定方法について
成田一郎(大成建設FM室長)
・第2講
ユニバーサルデザインレビュー
森山政与志(日本郵政東日本プロジェクト室GL / 新潟医療福祉
大学講師)
・第3講
CASUDA / オフィスのUD評価方法
沢田英一(清水建設技術研究所主任研究員 / 工学博士)
・第4講
オフィスワーカーの障害レベルに応じた既存オフィス整備
児玉達朗(東京電力 / 工学院大学博士課程)
・パネルディスカッション:ユニバーサルデザインの計画手法

第4回セミナー 「企業のユニバーサルデザイン運用事例」

(先着80名)(コーディネータ 加藤真由美)
12月6日(土)13:00-18:00 TEPCO銀座館

・第1講
オフィス空間のユニバーサルデザイン向上
宇多村志伸(富士通デザイン)
・第2講
外資系証券会社の企業理念とユニバーサルデザイン導入実践
加藤真由美(外資系証券会社)+今井壽志(フォースアソシエイツ代表)
・第3講
ファシリティマネジャーから見たオフィスのユニバーサルデザイン
・パネルディスカッション:企業のユニバーサルデザイン運用事例

<オフィスのユニバーサルデザイン導入に役立つ資料>

●オフィスへのユニバーサルデザイン導入事例
「オフィスへのユニバーサルデザイン導入事例」。研究部会メンバーでもある外資系証券会社の東京オフィスをユニバーサルデザインの見地から見直しを求められ、これに対する提案と改善の過程を、写真、図表を豊富に使用し解説したもの。
2008年5月発刊

●オフィスのユニバーサルデザイン評価手法(CASUDA)
日本初のユニバーサルデザインの評価法。CASUDAは、日本で初めてのオフィスのユニバーサルデザインの定量的評価法。ファシリティマネジャーのオフィス評価ツールの他、建築計画の指針・ガイドラインとして、不動産のユーザビリティ評価ツールとしても活用できる。
2006年9月発刊

●オフィスのユニバーサルデザインに向けて
JFMAユニバーサルデザイン研究部会が行ってきた調査研究をまとめたもの。オフィスのユニバーサルデザインに関する理論、調査研究、導入の手法、ガイドライン、調査結果、企業事例を豊富に掲載。
2004年発刊

JFMAホームページから、購入申込ができます。
http://www.jfma.or.jp/books/page2.html

図1
図2
JFMAUD研究部会では2004年に「ユニバーサルデザインガイドライン」、2006年に「ユニバーサルデザイン総合評価手法(CASUDA)」、また設計プロセスにユニバーサルデザインを取り込むための「UDレビュー」を考案した。さらに今年は「オフィスへのユニバーサルデザイン導入事例」を紹介した報告書を発刊。ある外資系金融機関がダイバーシティを経営課題に掲げ、それを実現する一環としてオフィスをUDの視点から見直した事例が掲載されている。
セミナー風景1
セミナー風景2
今年9月に開催されたセミナー風景
オフィスへのユニバーサルデザイン導入事例
オフィスへのユニバーサルデザイン導入事例
オフィスのユニバーサルデザイン評価手法
オフィスのユニバーサルデザイン評価手法(CASUDA)
オフィスのユニバーサルデザインに向けて
オフィスのユニバーサルデザインに向けて

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