日本から世界まで。さまざまなUD活動を紹介 ユニバーサルデザインの今

ユニバーサルデザインの取り組み事例を3つに分類してご紹介。
街づくり、モノづくり、ヒトづくり。いずれも連関していますが、興味のある分野から、ぜひご覧ください。

 100円商店街の火付け役、齊藤一成さん

コミュニケーションこそが商売の原点
― 新庄100円商店街の仕組み ―

郊外の大型店に顧客を奪われ、疲弊し続ける地方の商店街。そんな中、山形県新庄市で活動するNPOがはじめた、商店街活性化を目的にしたイベント「100円商店街」が全国に広がっている。
(ユニバーサルデザイン編集部)

【写真左:100円商店街の火付け役、斉藤一成さん】

ワゴンセールの発想を増幅

 地方の商店街があえいでいる。郊外の大型店に顧客を奪われ買い物客はまばら。多くの店主が活路をつかみあぐねる中、新庄発商店街活性化のイベント「100円商店街」が全国で注目を浴びている。

100円商店街を仕掛けたのは、公務員や自営業、会社員ら8名の地元へのUターン組から成る特定非営利団体AMP。代表の齊藤一成さんによると、AMPは増幅器(アンプ)の意味で、地域の夢を増幅し実現しようとする願いが込められているそうだ。「正直、われわれは今の新庄があまり好きではありません。でも、だからこそ、街を魅力的にしたい気持ちは誰よりも強いのです」。

齊藤さんは市役所勤めのかたわら、中小企業基盤整備機構の認定アドバイザーとして活躍する。全国を視察する中で、特に印象深かったのが名古屋市の大須商店街だという。各店舗の構えは間口が狭く奥行きが深い。店内だけでは使い勝手が悪いので、店頭に商品を並べ外で接客するスタイルが定着している。「生鮮食品や日用雑貨、仏壇屋などが混在するのが雑多で魅力的なのです」。

100円商店街の発想は、新庄の商店街をメンバーと歩いていた時に生まれた。メンバーの「不良在庫をワゴンセールで処分すればいいのに」というつぶやきがヒントになり、そのイメージを増幅。商店街全体を100円ショップに見立てる構想へと進んだ。全ての店頭に100円ワゴンを設置し店員は外で接客する。そして会計は店内のレジで行う。いわゆる「100円ショップ」とは異なり、100円ワゴンには専門店ならではの掘り出し物が並ぶ。行政の補助金に頼らない自主運営の試みである。

全店を巻き込む

 齊藤さんたちはまず、南本町商店街のリーダー、井上和郎さんと遠藤安彦さんを訪問した。2人は最初、100円のものを売ってどうなるのか、と懐疑的だった。しかし何もしなければ将来は無い。やるからには全店の参加が不可欠だ。決意を固めた2人は、商店街40件のうち、銀行や空き店舗を除く30数件の店主を口説くために日参した。井上さんは「最後は根負けして、いやいやながら参加してもらったのです」と苦笑いする。

次に何を売るかで悩んだ。電気店には乾電池、洋品店には端切れの生地ぐらいしかない。そこで、業態にとらわれず何でも販売できることにした。「金物屋で野菜を売るのもよし。1日のイベントだから八百屋に怒られることもないでしょう」。半信半疑のまま準備を進めていた商店街に転機が訪れたのは、朝日新聞の小さな記事がきっかけだった。各紙が100円商店街を取り上げ、YahooもWebサイトで発信。地域住民の認知度はもちろんのこと、全国の商工会議所や行政から問い合わせが殺到した。

商店街の中心に位置するAMPの事務所
商店街の中心に位置するAMPの事務所
南本町商店街「リビングセンターくらきち」の井上和郎さん(左)と「インテリアやま屋」の遠藤安彦さん(右)
商店街自作のチラシ
商店街自作のチラシ
老若男女が集う100円商店街
老若男女が集う100円商店街
ワゴンを挟んで会話を楽しむ買い物客
ワゴンを挟んで会話を楽しむ買い物客

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