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ユニバーサルデザインの取り組み事例を3つに分類してご紹介。
街づくり、モノづくり、ヒトづくり。いずれも連関していますが、興味のある分野から、ぜひご覧ください。

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いわて銀河鉄道のIGR地域医療ライン
― 不安な通院から“あんしん”の通院へ ―

医師不足などにより地域の病院が診療科目を減らし、都市部の総合病院へ通院を余儀なくされるケースが増加している。 そんな通院客が抱える不安を少しでも軽減するためにIGRいわて銀河鉄道がはじめた総合サービスが「IGR地域医療ライン」だ。
(ユニバーサルデザイン編集部)

通院を助けるアテンダント

 11月5日より第3セクター・IGRいわて銀河鉄道(以下IGR)は、県北部から盛岡市内の総合病院へ通院する人を対象に「IGR地域医療ライン」という総合サービスを開始した。このサービスを支えるのは、「アテンダントの乗務」「あんしん通院きっぷ」「専用駐車場の設置」など、通院客に安心して利用してもらうためのさまざまな取り組みである。

通院客の介助をするアテンダントが乗務するのは平日のみで、午前の便が7時43分金田一温泉(きんたいちおんせん)発、9時盛岡着。午後は2時10分盛岡発、3時26分金田一駅着の列車。

定期列車の後部車両の全座席が優先席になっており、アテンダントは体の不自由な人への乗降の手伝い、盛岡駅から病院までの交通手段の案内のほか、要望があればひざ掛けや薬を飲むための水を提供するサービスも行う。

また車内でアテンダントに盛岡駅からのタクシーの利用を申し出て整理券を受け取ると、提携している岩手中央タクシーの乗務員が午前9時に駅構内のホーム上で利用者を出迎えてくれる。

そして盛岡市内にある岩手医科大学付属病院、谷藤眼科医院、岩手県立中央病院の3病院に定額200円で送り届けてくれる。上記の3病院はIGRの行ったアンケートで、利用者からの要望が特に多かった病院だ。

安心の通院を支えるさまざまな取り組み

 このようなサービスを列車の車内で通院客向けに実施したのは、全国ではじめての試み。ほかにも通院を証明する診察券などを提示すれば誰でも購入できる、通常運賃より割安な「あんしん通院きっぷ」、最寄り駅まで車で来る通院客のために無料駐車スペースを設けるという工夫も行っている。

通院客専用の無料駐車スペースが設けられているのは、金田一温泉、小鳥谷(こずや)、小繋(こつなぎ)、奥中山高原、御堂の各駅。地方では都市部のように公共交通機関が発達しておらず、車での移動がメインになるので、マイカー利用者にとって無料駐車スペースはありがたい。

IGRが走る一戸町、岩手町の高齢化率はすでに3割を越え、二戸市もじきに3割に達する勢い。「IGR医療ライン」がスタートした背景には、地元病院が診療科目を減らし、やむなく高度医療を受診するために都市部の病院へ向かう高齢者の増加が理由に挙げられる。

この問題は多くの地方にも共通して言えることだろう。通院には高額な交通費だけではく、移動中に具合が悪くなったときへの心配、視覚や足に障害がある人は乗降の際にも不安がつきまとう。「IGR地域医療ライン」は、それらの悩みを少しでも解消し、誰もが安心して移動できる交通システムの構築をめざした新たな方策である。

 IGRいわて銀河鉄道は、岩手県を中心に沿線市町村や地元企業等が出資している第3セクター方式の鉄道会社
IGRいわて銀河鉄道は、岩手県を中心に沿線市町村や地元企業等が出資している第3セクター方式の鉄道会社
目時(めとき)-盛岡間を約1時間半かけて走行
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 駅の無料駐車場には、通院客専用のスペースが設けられている
駅の無料駐車場には、通院客専用のスペースが設けられている
シェルターの車道への張り出し
盛岡駅から病院までは、定額料金でタクシーを利用できるシステムも
アテンダントが乗務する後部車両は、全席が優先席
アテンダントが乗務する後部車両は、全席が優先席
乗降の手伝いをするアテンダント(
その1)
乗降の手伝いをするアテンダント(その2)
乗降の手伝いをするアテンダント
アテンダントは交通手段の案内のほか、通院客の話し相手にもなっている(その1)
アテンダントは交通手段の案内のほか、通院客の話し相手にもなっている(その2)
アテンダントは交通手段の案内のほか、通院客の話し相手にもなっている

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