病院ブランディングのポイント

企業は顧客満足と評価を高めるため、経営資源を集中させます。収益を最大化する一方、支出を最小限に抑える企業努力を行います。病院も同様ですが、医療では「顧客満足と評価」の特異性に注意しなければなりません。利用者(患者)の目的が娯楽や利便性などではなく、病気を治療して健康を取り戻すことに集約されるためです。この欲求は、マズローの欲求階層説では最も根源的な生命維持の次元に位置づけられます。例えば娯楽への欲求が人それぞれ多様なことに比べ、生命維持のそれは人類共通、すなわち普遍的とも言えます。個人的嗜好や流行に左右されることがなく、肉体的、精神的に研ぎ澄まされた感覚に左右されます。患者は、医師のちょっとした表情の変化も見逃しません。消毒の匂いや医療機器の音、薬の味に敏感になります。すべてが己の生命維持に直結するためです。

患者は殺生与奪の件を医師と病院に委ねていると言っても過言ではないでしょう。患者の視点に立つとき、最も大切なのは「信頼」をおいて他にはありません。

病院が提供するものには、「見えるもの」と「見えないもの」があります。前者には建築や設備といったハードが、後者には検査や治療、投薬、手術をはじめとする医療サービスや医療情報、接客、病院経営のビジョンや教育制度などのソフトが含まれます。患者はこれらを研ぎ澄まされた五感で「「知覚化」」し、病院を評価します。

以上のことから、病院ブランディングは信頼の「知覚化」がポイントとなります。病院は、診療・治療機能の集合体です。あらゆる設備や空間、人材、物品はその機能を最大限引き出すために存在します。五感で感じるそれらすべてに信頼感を与えることで、高い満足度と評価を達成するのです。

「知覚化」ではコミュニケーションが重要な役割を果たします。ここで言うコミュニケーションはたんなる情報伝達ではありません。共感を呼び起こし、相手の行動の制御する手段です。種類は大きく言語系と非言語系に分類され、前者には音声コミュニケーション、視覚コミュニケーション、嗅覚コミュニケーション、触覚コミュニケーションが、後者にはボディーランゲージやサイン(合図)などが含まれます。老若男女、障害の有無や国籍などにかかわらず、誰もが理解できるようにユニバーサルデザインに配慮することが大切です。

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